「うぅ……」

「わ!?ごめん、悪気は無くて」

いいよ、と無理矢理笑う。里奈はもう一度ごめんねと申し訳なさそうに言って、私の頭をぽんぽんと撫でた。里奈のそういう優しいところが、私は大好きだ。

「どんな人なのかな……もしかして、この学校の子?」

「あぁ、聞いた。栗原 一花(くりはらいちか)っていう、圭と同じクラスの女子らしいよ……生徒会の役員で家庭科部で、だから勉強も料理も裁縫もできて、すごく優しくてかわいらしい人らしい……」

「そ、そっか……。もう、喋らないでいいよ」

好きな人から彼女の話をされたのを察してくれたらしい。里奈は苦笑いして、窓の外を見、

「じゃあ、今年の花火大会は二人でいけるってことだね!」

はっと思い付いたようにこちらを向いて、里奈は明るくそう言った。

「男子もいないし、好きなだけ屋台のもの食べられるよ!!」

目をキラキラさせた里奈の、付け足されたその一言に思わず吹き出してしまう。
やはり持つべきものは里奈である。

「うん!」

その時私はようやく心から笑えた気がした。