「……あー」

それだけどさ、と何故か照れたように視線を逸らした圭。瞬間的に嫌な予感がして、私は息を止めた。


「まだ、言ってなかったよな。……俺、彼女できたんだ。だから、彼女と二人で行こうと思うんだけど、いい?」


昨日から、なんだけど……と嬉しそうに話す圭は、今まで見たことのない顔をしていた。

「えぇ!!?け、圭に彼女が……!?本当に?」

一瞬固まってしまい、何か言わなきゃと慌てて口にした言葉は我ながら取り繕った感じが否めない。それに気づかない圭は、にこにこしながら頷く。

「……おめでとう!!」

「ありがと!!」

ばっちりVサインをこちらに向ける圭の笑顔は、私といるときには絶対見せない顔で。……それがたまらなく悲しかった。

「まず最初に、親友のお前に言っておきたかったんだ。今度会ってみてよ!いい人だから、志帆とも気が合うと思うよ」

「へぇ!どんな人なんだろうなー、気になる」

「優しくて勉強もできて、何て言うか……好きだなーーって人」

「ノロケかい!」

「はは、そーなっちゃったな」

「そっかぁ、彼女できたんだ……じゃあ、花火大会彼女と一緒に行かないとね。楽しんできてね」

「おう!……あ、母ちゃんには彼女できたこと内緒な?」

その後、彼女の話をいろいろと聞いた。初めての彼女ということで圭はだいぶ舞い上がっているようだった。


『告白、できなくなっちゃったな』


私はずっと上の空で、たまに圭の話に相づちを打ちながら、ぼんやりと先のことについて考えていた……。