そう言えば私が大好きな笑顔を見せて、手を振って背を向けて歩き去っていく彼の後ろ姿に向けるカメラ。
ストーリーになんて絶対にあげない、フォルダに眠らせていつか消す動画。
その姿が見えなくなったあとも構え続けていたら不意に真っ暗になった画面。

『数馬…なんで』
「…お節介だってわかってるけど、心配で来た」
『…泣かなかったよ、それにちゃんと言えた、っ、』
「俺がいるんだから…だから今ぐらい、泣いていいんだぞ」

彼に抱きしめられてしまえば、止まることなく溢れてくる涙。
声を殺して泣いている間中、数馬はずっと抱きしめてくれていた。

「気付いたかな、ブレスレット」
『え?』
「や…なんでもない」
『…あ、お守りありがとう。効果抜群だった』
「それやるよ」
『え、いいの?』
「そんで今度ちゃんと美奈のために買ったやつあげるから」

帰ろっか、と差し出された右手にそっと重ねる左手。
その腕には、「言いたいことを伝えられますように」と彼が渡してくれた、彼お気に入りのブレスレットが、日の光で輝いていた。