◎◎

ふと思う時がある。親しい友達の線引きはどうやってするのが正解なんだろう、と。
それとも正解なんてないのか、なんて。

『ごめん、待った?』
〈んー、全然〉

グラスに刺さったストローをぐるぐる回しながら考えていたら席に来た彼女。
きちんと集合時間の10分前だった。

『昨日は楽しかった?』

俯きがちにそう尋ねる彼女の表情に映し出された思いに、俺はどうして今まで気づかなかったんだろうか。

〈そんなんじゃない、って言ったら信じる?〉
『…え?』
〈親同士が仲良くて家族でご飯いかされてるだけだ、って〉
『…でも、あの子は、』
〈昨日ちゃんと振った〉

ぱっと顔を上げた彼女と視線がぶつかる。

〈それに…美奈に謝っておいて、って言われた〉

そう言うとまた彼女の視線は下がってしまって。
テーブルの上に置かれた両腕の片方、左腕には見覚えのないシルバーのブレスレットが照明の光をきらりと反射させていた。