誰かの腕の中で目を覚ますのは久しぶりだった。
幸せそうに寝ている数馬の腕の中からそっと抜け出して、服を着替えてリビングにい置きっぱなしになっていたスマホを開いて一番に目に入ってきたのは湊からの連絡だった。
[私も話したいことある]
[おけ、あのカフェでもいい?]
今日は昼過ぎから休日出勤だという湊とお昼に会う約束をしてトーク画面を閉じる。
「美奈、」
『わっ、数馬』
後ろから腕を巻き付けてまだ眠そうに私の首元に顔を埋めた彼にも…ちゃんと言わなきゃいけない、のか。
『…あのさ、私、』
「話してくるんだろ、湊と」
『…うん』
好きだなんて口にした私が次の日の朝には他の男に会いに行くと告げるなんて傍から見たら最低な女だと思う。
でも、今日しかないと思った。
…引き返せる時はとっくに過ぎてしまっていた。
「返事はいらない…けど、帰ってきてくれたら嬉しい」
そう呟いた彼の腕から伝わる力がぐっと強くなった、気がした。


