しばらく教室に残って音楽を聞いていたら、いつのまにか椿くんは教室からいなくなっていて、
教室にはもう、私以外誰もいなかった。
(……帰ろう)
椿くんは
お昼は誘ってくるけど、放課後は誘ってこない。
私と外を歩くのは、恥ずかしいんだと思う。
彼女だって思われるのが、嫌なんだと思う。
校内なら、本気じゃないだろうってみんなが知ってるから…だから構ってくれるだけ。
恋人らしいことなんて…別になにもない。
カバンを持って席を立つと
ガラガラ、と教室のドアが開く音がした。
「……つ…、あ」
椿くん、って言おうとして、
違うことに気付いて声が出てしまった。
「楸くん…?」
呼び方を間違えた、わけじゃなく。
そこに立ってたのは、椿くん双子の兄弟の楸くんだった。



