椿くんはそう補足して、
「あっち行こ」と私の手を引っ張って、楸くんから離れていった。
……うーん…
彼氏の兄弟に嫌われるって、なんだか複雑だ…。
「芽瑠」
「…う、うん?」
「芽瑠って、俺のこと志木って呼ぶよな」
突然の椿くんの発言に、ギクッとする。
…椿くんのまわりにいる女の子は派手で、みんな『椿』って呼んでる。
椿くんの好みは、きっとそういう子なんだ。普通に呼び捨てができるような子。
でも私には…ハードルが高すぎて。
名前の呼び捨ては無理なので、名字を呼び捨てで呼んでいる。
「彼女なんだし、
それに、志木だと楸も一緒だから」
「あー…そ、そうだね」
「……名前で呼ぶのは、嫌?」



