ぎゅ、とカバンの紐を握ると、 楸くんが「はぁ、」と1つ息を吐いた。 「……?」 「椿がそんなの覚えてるわけなくない? だってそれ、俺だし」 呆れたような、めんどくさそうな顔をして言う楸くん。 ……え。 ………俺だし…って? 「アンタに構ってたのは俺だよ。 って言ったら、アンタは椿じゃなくて俺のこと好きになる?」 『好きになられても困るけど』と、楸くんは嘲笑うようにフンと鼻を鳴らした。 ……えっと… それは本当なの?嘘なの? あの時…私が好きになったのは、 楸くん…なの…?