友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~

『ドンッ!』
不意に後ろからぶつかられて、私はバランスを崩してその場に転んだ。

いつもならそのくらいの衝撃では転ばないのに、さっき飲んだ奇妙な飲み物のせいで足元がふらついて仕方ない。

ふわふわとした感覚が、小さな衝撃なのに大げさに転ばせた。

「すみません。大丈夫ですか?」
地面が近くなった視界に聞こえてくるその声に、私は顔をあげることができない。

その声に聴き覚えがあるからだ。

「大丈夫ですか・・?」
返事を返さない私が心配になったのか、その声の主がしゃがむのが分かる。

黒のスニーカーに、黒のパンツ。
白のシャツが視界に入る。

伸ばされたごつごつとした骨ばった手も。