友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~

渉への気持ちをあきらめようとしても、つい渉の方が気になってみてしまうことがあった。

香澄のお葬式の日もそう。

いつだって私は詰めが甘いんだ。


「あの時みたいに、また俺の前から逃げるのか?」
渉の言葉が胸に突き刺さる。

本当はもう一度渉の元へ戻りたい。

でもできない。
ダメなんだよ。

私はぎゅっと両手を握って本当の気持ちを隠しながら、最後の嘘をつこうと、渉の方を見た。

「酔って変なことしてごめんね。忘れて。お邪魔しました。」
早口言うと私は玄関の扉を開けた。