友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~

私を抱きしめ、背中をさすりながら香澄のお母さんは私の横に立つ渉に話しかける。

「あの子との約束、やっと果たしに来てくれたのね?」と。
香澄のお母さんも、渉と香澄の約束を知っているらしい。

「あの子も、待ちくたびれているかもよ?」
少し微笑みながらも、香澄のお母さんの瞳からも涙が一筋伝った。

「どうぞ?中に入って?体に障るから。」
香澄のお母さんと渉に背中を支えられて、私は香澄の家の中へと向かった。

懐かしい。

昔と全く変わらないその家の雰囲気に、懐かしさを感じていると
「あの子が生きている時からなるべく変えないようにしているのよ。何となくね・・・変えてしまうことが、あの子を置き去りにして進んでしまっているような気にさせるから。」
我が子を失った悲しみの癒えない香澄のお母さんの気持ちが、今なら痛いほどわかる私と渉。

気丈にふるまう中にも、大きな悲しみを感じる。