俺は立ち上がり、寝室の扉の前に立つ。

きっとこの扉の向こうで玲奈は泣いてる。

俺に涙を見せないように、寝室へ向かったのだとわかっている。

俺はそっと寝室の扉に手を伸ばす。

「玲奈」
扉の前でその名前を呼ぶと、玲奈の声がした。

玲奈も扉の前に立っていることが分かり、俺は扉を開ける手を止めた。

「入ってもいいか?」
「・・・ダメ」
玲奈の声が震えている。
「玲奈」
「大丈夫だから。私は大丈夫だから。だから・・・渉・・・」
震える声を必死に絞り出すように話す玲奈。
すぐにでも扉を開けて、玲奈を抱きしめたい。