「渉さんから話を聞いて、あなたが里紗のことで・・・気にしているって聞いたの・・・」
里紗とは亡くなった私の姉だ。
私は渉の方を見る。
渉はしっかりと頷いた。

「ずっと話さないとならないと思いながら、背を向けて来たことがあるの。」
急に潤みだす母の瞳。
そんな母が言葉に詰まると父が話始めた。

「里紗は5歳の時に小児白血病と診断されたんだ。」
姉の話は両親がしたがらなかった。だから、私は姉のことも、幼いころの自分の話もあまり知らない。
自分の記憶の断片をつなぎ合わせて想像するしかできなかった。

その話を両親がしようとしてくれている。

今の私には、我が子を失うつらさが分かる。
私はそっと自分のお腹に触れながら両親を見た。

そんな私の手をそっと渉が握ってくれる。