友達の恋人 ~ 一夜からはじまる愛の物語 ~

「これ、お腹にかけて」
そう言って渉は車の中にあった自分のパーカーを私のお腹にかけてくれる。

・・・今まで知っている渉とは違う。

必要な言葉は、いつだってくれた。
でも、こんなに話をする人じゃない。

ちらりと渉を見ると、少し焦っているように見えた。

「ごめんね、焦らせて・・・」
引っ越し業者のことで焦らせてしまっているのだと思った私が謝ると、渉が私の方に視線を向けた。
「あー。余裕で時間に間に合うだろ。」
「え?時間に焦ってるんじゃないの?」
「いや?あー。違う。ごめん。なんかさ、緊張してんだ」
「え?」
「大切な人二人も乗せてんだ。緊張すんだろ。」
・・・その言葉に私は思わず吹き出して笑ってしまった。