ー再会できた事は“奇跡”だって思ってるー

この街に戻ってきたのは、何年ぶりだろうか。そんなことを考えながら元々家があった方へと車は進む。親の仕事の都合で3歳になると同時にこの街を出た。大学生になった今、帰ってくるなんて思ってもいなかった。親の転勤が決まり、大学もこっちの方に進学を決め、高校の同級生に別れを告げ引越してきた。彼女に別れを言ったか? 3年間…いや、引越してからずっと彼女なんていた事がない。バレンタインデーは貰ったりしたが、告白は全て断ってきた。それには理由がある。

俺が引越すまで一緒に遊んでいた女の子が居た。隣の家に住んでいた相羽朱里(あいばあかり)だ。彼女は可愛いの最高峰。俺の天使だった。人見知りだった俺を見て、
「君の名前、教えてくれなきゃ一緒に遊んであげないんだから!!」
なんて上から目線。最初は苛立ったが、遊んでいくうちに恋という感情が芽生えた。たった1年の付き合いだが、俺にとってはいい思い出だ。その時から朱里が好きだ。だから、恋人なんて作らないと心に決めていたのだ。
“もし、朱里に恋人が居たら…”なんて考えたこともなかった。
しかし、15年という月日が経ってしまっているから彼氏がいても仕方がないのかもしれない。
そんなことを考えていると前まで住んでいた家に着いた。車を降りるとすぐに隣の家の名前を確認しに行った。
「“相羽”じゃない…」
朱里はもう隣には住んでいないのだ。
「朱里ちゃんところね、マンションに引っ越したんだって」
母は俺の気持ちを知っているかのようにこう言った。
「お兄ちゃん! 荷物出すの手伝って!!」
妹の愛花(まなか)に言われて家に戻る。

朱里、大学はどこなんだろう……