「ですよねぇ」と言って光琉はクスクスと笑う。
――いやいや光琉さんちょっと、笑いごとじゃないですよ? それが本当ならとんでもないクズじゃないですか。
「クズだって思ったでしょ、社長のこと」
「え、あ、まぁ。酷いなぁと」
ちらりと宗一郎を見ると、苦虫を嚙み潰したような顔をしてコーヒーを飲んでいる。
「ところが、聞いてくださいよ。あの女の子、実は有名だったんです」
「え? 有名?」
「御曹司キラーのしおりちゃん」
――え? しおりって言いました? いま。
「全身ブランド物に身を包み、パパは一流企業の重役という設定でパーティを渡り歩く。まぁプロですね、あそこまでいくと」
「――プロ?」
「社長ったら、まんまと引っ掛かったんですよ、釣り針に。危ないところでしたねー社長って今笑っていたんです」



