クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「ずっと心配だったのよ。主人があなたに『藤乃屋』を継がせるとか言い出すんじゃないかと思って。宗一郎さん、もういいの。そういうことなら、きっと事情があるんだと思うわ。主人にも退院したら聞いてみましょう」

「お母さん、宗一郎を。宗一郎のお母さんを、許してくれるの?」

「ええ、もちろんよ。まぁ彼女にはちょっと言いたいことはあるけど、でも宗一郎さんが、お父さんの子じゃないなら、もういいわ」

「宗一郎、よかったね、よかったね」

 結局その日、お見舞いには母だけが行き、紫織の母の勧めで彼は藤村家に泊まることになった。

「大丈夫?」
「ああ」

 辛かっただろうと思う。
 母はいいと言ってくれたけれど、それだけで心に受けた彼の傷が癒えたわけじゃないだろう。

 そんな彼の肩を抱くようにして、紫織は散歩に行こうと誘った。
 暑いけどそんなことは構わず、日傘を差して彼の腕に手を回した。

「ねぇ宗一郎。最後に京都に来たのはいつ?」

「去年来たよ、海外からの客を連れて」

「そう。でもこの辺は知らないでしょう?」

 兄妹かもしれないこと。
 兄妹ではなかったこと。
 それでも養育費を貰っていたこと。『藤乃屋』は廃業したこと。それらのことを、いったいどんな風に彼は知ったのだろう。

 あの何もない部屋で、ずっと悩んでいたのか。

「宗一郎、東京に戻ったら、一緒に住みましょう?」
 そう言うと、ハッとしたように振り返った彼はうれしそうに微笑んで、紫織の肩を抱いた。