ゆっくりと顔をあげた宗一郎は、それでも紫織の母の顔を見ることはできないのだろう。俯いたまま話をはじめた。
「俺の母親の嘘なんです。俺の本当の父親は石塚一郎という人で、俺が生まれる前に病気で死んだそうです。生活力のなかった母は、養育費ほしさに嘘をついて、藤村さんを利用したんです。母は言っていました。藤村さんを酔わせて部屋に連れ帰ったことはあったけれど実際はなにもなかったと」
「――そう。そうだったの」
「本当に、申し訳ありません」
紫織はただオロオロしながら宗一郎の隣で彼を抱くように背中に手を回していた。
妹ではなかったという安堵の思いと、彼が七年間迎えに来てくれなかった理由がおぼろげながらも見えてきた。
もうそれだけでも十分だったし、何よりも彼が可哀想で、いつしか涙を流していた。
でも、母は許してくれるのだろうか。
不安な思いで見上げると、母は笑っていた。
「よかったわ」
「お母さん?」
「ああ、良かった。そうなのね」
その声があまりに明るかったせいか、宗一郎も顔をあげた。



