クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「――そうだったのね」

「紫織は? どうなんだ? 室井さんとは」

「課長? なに言ってるの? 課長とは何もないわよ、尊敬する師匠だもの。やだもぉ、なにもあるわけないじゃない」

「付き合っている人は?」
「いないわよ」

「見合いをしに京都に行くじゃないのか?」
「え?」
「光琉が教えてくれた」

 ――あ。もしかしてそれで喫茶コーナーに来たの?

「しないわ。お母さんには断った」

「――そうか」
 ホッとしたように肩を落とす宗一郎に安心して、紫織は体を起こした。

 やれやれとため息をつく。

「――紫織」
「ん?」

「あのな―― 紫織」

「うん?」

「あれからずっと俺は、紫織の幸せを願っていたんだ。何もしてやれないことが情けなくて、紫織が幸せならそれでいいって思った。それが本当の愛だって自分に言い聞かせていたんだ。でも、紫織が目の前に現れて――。あきらめようと思ってあんな風に酷いことを言った。――ごめん」

 肩を落としてうつむいた彼が、なんだか可哀そうになった。

 酷いことを言われて、可哀そうなのは私のほうでしょう? 七年前もあんなにこの言葉を待っていたのに。
 そう思うのに、やっぱり慰めたくなってしまう。

 だって、最初に彼を突き放したのは、自分なのだから。

「そんなにあやまらないで。もういいから」
「本当に?」

「うん。本当よ。もう大丈夫。おあいこだから」

 宗一郎は、まるで花が咲いたように笑った。
「紫織」

 ――もういいよね? 私。
 そう自分に問いかけた。