紫織が上げた顔には、料理を作っていた時の高揚感はもう浮かんでいなかった。
「どうぞ」
「ありがとう。すぐ近くの店が開いていたんで、買ってきたんだ」
宗一郎が差し出したのはケーキの箱だった。
このマンションのすぐ近くに遅くまで開いている洋菓子店がある。ここに引っ越した初日に買ってみたら、とっても美味しいケーキだった。
「ありがとう。あの店のケーキとっても美味しいの。宗一郎、ご飯は食べたの?」
「いや、会社から真っ直ぐ来たから」
「そう。じゃあ一緒に食べましょ?」
少し照れたように宗一郎は頷いた。
「座って待っていて」
部屋の中を見渡すように首を回している彼は、驚いているのかもしれないと、紫織は思った。
「綺麗な部屋でしょ? 美由紀のね、あ、覚えてる? 美由紀」
「ああ、覚えてるよ」
「美由紀が紹介してくれて」
お味噌汁を温め直す間に、鶏の南蛮漬けを盛り付けて、タルタルソースをかけて。
レタスにトマトにポテトサラダと、茄子の入った小鉢。話をしながらでも、料理は次々とテーブル並ぶ。
「じゃあ、まず食事にしましょう」
「もうできたのか?」
まだ腰が落ち着くまえにソファから立ち上がった宗一郎は、テーブルを見て目を丸くした。
「紫織が作ったのか?」
「そうよ。すごいでしょ」
――宗一郎は知らないのよね。
紫織が料理をするようになったのは大学生の頃だった。当時藤村家に通っていた家政婦から教えてもらっていた理由は、その時既に宗一郎との結婚を意識していたから。
ふたりとも親と同居だったので紫織が手料理を披露する機会はついになかったけれど。
「口に合うといいんだけど」
いただきますと言って、宗一郎は最初に味噌汁を口にした。
「どうぞ」
「ありがとう。すぐ近くの店が開いていたんで、買ってきたんだ」
宗一郎が差し出したのはケーキの箱だった。
このマンションのすぐ近くに遅くまで開いている洋菓子店がある。ここに引っ越した初日に買ってみたら、とっても美味しいケーキだった。
「ありがとう。あの店のケーキとっても美味しいの。宗一郎、ご飯は食べたの?」
「いや、会社から真っ直ぐ来たから」
「そう。じゃあ一緒に食べましょ?」
少し照れたように宗一郎は頷いた。
「座って待っていて」
部屋の中を見渡すように首を回している彼は、驚いているのかもしれないと、紫織は思った。
「綺麗な部屋でしょ? 美由紀のね、あ、覚えてる? 美由紀」
「ああ、覚えてるよ」
「美由紀が紹介してくれて」
お味噌汁を温め直す間に、鶏の南蛮漬けを盛り付けて、タルタルソースをかけて。
レタスにトマトにポテトサラダと、茄子の入った小鉢。話をしながらでも、料理は次々とテーブル並ぶ。
「じゃあ、まず食事にしましょう」
「もうできたのか?」
まだ腰が落ち着くまえにソファから立ち上がった宗一郎は、テーブルを見て目を丸くした。
「紫織が作ったのか?」
「そうよ。すごいでしょ」
――宗一郎は知らないのよね。
紫織が料理をするようになったのは大学生の頃だった。当時藤村家に通っていた家政婦から教えてもらっていた理由は、その時既に宗一郎との結婚を意識していたから。
ふたりとも親と同居だったので紫織が手料理を披露する機会はついになかったけれど。
「口に合うといいんだけど」
いただきますと言って、宗一郎は最初に味噌汁を口にした。



