――酷いことを言ったのは私だけど……。
片時も忘れることはできなくて、宗一郎から電話があるんじゃないかと思いながら電話を見つめていた。
道を歩けば、どこからか宗一郎が現れるんじゃないかと、意味もなくあたりを見渡して。
いつも。いつだって宗一郎を捜していた。
彼が着ていた服。
彼と似ている髪型。
何を見ても宗一郎を想っていた。
『藤乃屋』がいよいよ店を畳むことになった時、何もかも失って絶望の縁に立たされたあの時でさえ、宗一郎が来てくれるんじゃないかと、ずっと待っていた。
お見合い結婚もなくなって、誰にも反対されなくなったのよと。
何度電話をしようと思ったか。
辛くて悲しくて、せめて声だけでもと思ってかけた公衆電話から、現在使われておりませんと聞こえたメッセージ。
泣き崩れた夜。
――あの日の悲しさを私、忘れらない……。
そう思って顔を覆った時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴った。



