京都の実家には帰れなくなった。
かといって今更課長に休まないとも言いづらいし、それよりなにより問題は母だ。
実家に帰る予定を一日遅らせたら、母はさぞかしガッカリするに違いない。
――困ったなぁ。
湧きおこる後ろめたさに苛まれ、浮き足立っていた心が落ち着いてくる。
やっぱり駄目だと宗一郎に断ればいい。直接なら言えなくてもメッセージを送ればいいじゃない? とパソコンに向っても、なんだか指は動かない。
重ねられた唇が熱を帯びたまま、心を惑わせる。
紫織はそっと、唇に触れた。
七年前も、あんなに情熱的なキスをしたいたのだろうか?
時間が止まったような、渦のなかに巻き込まれるような、そんな激しいキス。
あんなキスをされたら、京都には帰れない。
――ごめんなさいお母さん。



