否定する機会を失ってしまった。
 ゼリーを配り歩いている光琉をわざわざ捕まえて否定するのも気が引ける。

 戸惑いはしたものの、まぁいいかとあきらめて、紫織は喫茶コーナーに向かった。

 お見合いだと誤解されて困る相手がいるわけじゃないと思いながら、宗一郎のことが頭を過る。

 でもそれは考えないことにした。
 それに、総務の陽子さんなら早速噂話としてふれ回るかもしれないが、光琉は不確かな噂などするような子ではない。

『私、超がつくほど現実的なんですよ』
 彼女は見た目と違って、ずっと大人だ。そして強い子である。
 思えば、『SSg』に来てからずっと、光琉の弾けるような若さと明るさが眩しくて仕方がなかった。

 その眩しさがそのまま紫織の心に影を作り、卑屈さを生み出ていくような、そんな感じがしていた。
 羨ましくて、劣等感に苛まれて仕方がなかったのに。
 いまは素直に、彼女の眩しさを受け止めることができる。

 ――我ながら、ほんと調子いい。