「社員ががんばっているのに、先には帰れない」
紫織はペコリと頭をさげた。
「この前はごめんなさい。酷い言い方してしまって」
喧嘩腰だった前回とは違って、素直な気持ちのまま、穏やかにあやまった。
「いや、いいよ別に。俺も最初に酷いメッセージを送ったからな」
――おあいこね。
心の中でそう答えて、紫織は行儀よく頭を下げた。
「じゃ、失礼します」
「これ飲んだら、あとで手伝いにいくよ」
――あ。
コーヒーに視線を向けた時、名刺入れが見えた。
革と織物で出来た名刺入れは、紫織が宗一郎の就職祝いに作ってあげた物だった。このために革細工を習って、内側には結城紬を使っている。
「ん?」
「――名刺入れ」



