「え? あ、うん」
「社長、ジーーッと名刺入れを見つめていたんです。切なそうーに背中に哀愁を漂わせながら」
「――名刺入れ?」
「はい。もしかすると名刺入れじゃなくて小銭入れかなぁ? ちょうどそれくらいの大きさの、和風の物なんですけれど。さっきね、社長の扉が少し開いていて見えたんですよ。デスクに腰をかけて、こんな風にその名刺入れを手に持って。なんだかものすごく辛そうで」
身振り手振りを交えながら、光琉は大げさなほどため息をついた。
「どうしよう何かあったら」
「――え? な、なにかって?」
「だから紫織さん、コーヒーでも届けて様子を見てきてくださいよ。ね?」
「え? あ、あの光琉ちゃん?」
「室井さんの分もコーヒー持っていきますから〜。社長はアメリカンのブラックでーす」
いつの間にか手にしたコーヒーを掲げるようにして光琉は小走りに立ち去った。



