クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「お客さんで来ていた社員もいるし、別に私も隠してはいないから、みんな知っているんだと思いますけど、会社のイメージが悪くなっちゃうといけないから、社外的にはキャバ嬢だったことは秘密ですよぉ。って今更か」
 そう言って光琉は明るくクスクス笑う。
「あはは。うん、わかった」

 屈託のないその笑顔が眩しくて、紫織は視線を泳がせた。

 家が窮地に陥って、彼女は自分に出来ることを見つけて頑張った。

 ――なのに私は。

 同じような状況にいても、オロオロする両親を見ながら何もできずにただジッとしていた。

 結婚で『藤乃屋』を助けるつもりではいたが、実際はぐずぐずと尻込みするだけだった。
 ひと回り以上歳が離れているとか、食事をする時のクチャクチャと音を立てる仕草がどうしても嫌だとか。口には出さなかったけれど、積極的に受け入れることはできずにいた。
 母がどうしてもと言うなら、その時は仕方がないと、ただジッとしていた。

 あの時、最初に話があった人と結婚していれば、『藤乃屋』は助かっていたかもしれない。
 そう。きっと間に合っていたに違いないのだ。自分から『私あの人と結婚したい』と言っていれば……。

 彼女は違う。光琉が紫織の立場なら笑って結婚しただろう。『心配しないで』と笑って。
 彼女ならきっと、そうしたに違いない。