本当に知らなかったんだ。あの日お前が現れるまで、俺は『花マル商事』から来るのが紫織だとは、知らなかった。
もう二度と会うことは許されないというのに。こんな形で会ってしまって、どうしたらいいのかと愕然としたんだ。
あの日、動揺を隠すことに必死で、ずっと履歴書を見つめた。
懐かしい紫織の書く、綺麗な字。
二度と触れてはいけない指先。
俺にはもう許されない。
七年前のあの日、紫織がわざと傷つくような言い方をしたように、紫織を突き放さなければならないと思った。
できれば辞めてほしいと。
――頼むから。お願いだから。
俺が会社を離れることはできない。紫織から離れてもらうしか。
それであんなことを。
「ごめんな……。ごめんな、紫織」
詰まりそうな喉をゴクリと鳴らし、思いあらためて見つめた入口に美由紀の姿が見えた。
「美由紀!」



