クールな社長の不埒な娶とり宣言~夫婦の契りを交わしたい~

「あはは、冗談ですよ。でももう大丈夫です。僕が藤村さんとずっと一緒にいるようにしますから」

「じゃ安心だな。紫織、副社長から離れるんじゃないぞ」

「はーい」

 正直言うとショックだったのは宗一郎のことだけじゃなかった。

 こんなに沢山人がいるのに、絡まれていることを誰も気づいてくれなかった。
 誰も助けてもくれなかったこともだが、気づいてさえもらえなかったというのは、それだけでも結構悲しいものである。

 でも救われた。
 ふたりのいまのやり取りは、紫織の寂しさをきれいさっぱり消し去ってくれるようだった。

 もしかすると自分が思った以上に傷ついていたのかもしえない。
 うれしくて、ちょっと泣きそうになった。
 いや、ちょっとなんてものじゃない。もしここがパーティ会場じゃなければ、この場に崩れ落ちて泣き出してしまったかもしれない。

 紫織はそんなことを思いながら、涙をこらえた。

「着物いいねぇ。すっごく素敵だよ」
「あ、あはは。ありがとうございます」

「やっぱり日本人なんだなぁって、藤村さんの姿を見て血が騒ぎました」

「血、ですか」

「そうドックドクと暴れます」

クスクスと笑い合った。
――副社長っておもしろい。