「あの、俺、A組の南野です」
「はあ……」
まゆきとふたりのきらめく時間を邪魔された気がして、わたしは警戒しながら彼を見た。
「佐治に便乗しちゃうんだけど、あの俺――」
え? 何この既視感。
まさか。
「前から実は市井さんのこといいなと思っててあの、あの今、彼氏とかいますかっ」
肩で息をしながら、南野くんはひと息に言った。
「いや……いないけど……」
「んじゃ、もしよかったらあのっ、付き合ってくださいっ」
さっきの佐治くんみたいに、深く頭を下げる。その前髪を波が濡らしてゆく。
「……」
突然のことに頭がついていかない。
「いっちゃえいっちゃえ」
黒髪をぺたりと頬に貼りつけたまゆきが囃《はや》した。他人事だと思って、無責任に。
「でも……」
この人のこと全然知らないし。そう言おうとして、よく鍛え抜かれた筋肉に目がいった。
なんだか誠実そうな人だな。低めの声もちょっと好きかも。
もしかしたら、付き合ってみても、いいのかもしれない。心の動きを楽しんでいる自分がいた。
わたしはファーストインプレッションを信じるたちなのだ。
【完】
「はあ……」
まゆきとふたりのきらめく時間を邪魔された気がして、わたしは警戒しながら彼を見た。
「佐治に便乗しちゃうんだけど、あの俺――」
え? 何この既視感。
まさか。
「前から実は市井さんのこといいなと思っててあの、あの今、彼氏とかいますかっ」
肩で息をしながら、南野くんはひと息に言った。
「いや……いないけど……」
「んじゃ、もしよかったらあのっ、付き合ってくださいっ」
さっきの佐治くんみたいに、深く頭を下げる。その前髪を波が濡らしてゆく。
「……」
突然のことに頭がついていかない。
「いっちゃえいっちゃえ」
黒髪をぺたりと頬に貼りつけたまゆきが囃《はや》した。他人事だと思って、無責任に。
「でも……」
この人のこと全然知らないし。そう言おうとして、よく鍛え抜かれた筋肉に目がいった。
なんだか誠実そうな人だな。低めの声もちょっと好きかも。
もしかしたら、付き合ってみても、いいのかもしれない。心の動きを楽しんでいる自分がいた。
わたしはファーストインプレッションを信じるたちなのだ。
【完】



