ードクン、ドクン。
心臓の音が煩く鳴る。
身体中の熱が徐々に持ちはじめる。


顔が真っ赤になっているであろう私を見せたくなくて、
先輩から視線を逸らし、コクリと首を縦に振った。


…先輩はやっぱり、ずるい。
私のことを好きじゃやないのに、突き放さないんだもん。
だから、私も夢を見てしまう。


こうして付き合っていたら、いつか私に気持ちが向いてくれるんじゃないか。
いつか、ちゃんと好きになってもらえるんじゃないか。
ってー。


……そんなことないのに。


そう思っていると、急にズキリと痛み出した胸。


「…っ、」


前屈みになり、制服の上からぎゅっと胸を強く握る。


「未来!?」


隣から私を呼ぶ声が聞こえる。
けれど、それに笑顔で答える余裕を今の私は持ち合わせていない。


「…っ、ぅっ」


昼間よりも、ぎゅっと握りつぶされるようなズキズキする痛みに、
自然と冷や汗がじわじわと流れてくる。


「ちょっと、待ってろ!」


先輩はそう言って、立ち上がり、どこかに行ってしまった。


こんなに痛いのは今回が初めて。
今までは少しズキッと痛むだけだったのに。


できる限り痛みを和らげようと、ゆっくりと小さく深呼吸をする。
すると、先程よりも痛みが和らいでいく。


「…ふぅー…」


息を吐きながら、身体をゆっくりと起こす。


今までこんな痛くなかったのに…どうして急に?


漠然とした不安が私の心を蝕んでいく。