昴先輩は、私に。
いや、私たちに気付いていないのか、今も黒田先輩と話している。
「ねえねえ」
私の腕をツンツンとしてくる。
「......なに?」
沙羅が言いたいことが、嫌でもわかってしまう。
「黒田先輩と、さっきゴール決めたかっこいい先輩って、付き合ってるのかな?」
二人を見て、ニヤニヤと笑っている沙羅。
...........付き合っているのは、私だよ。
だけど、それが言えない。
さっきまでいつか沙羅に言えたらいいな、なんて思っていたのに。
今思うのは、沙羅に私と昴先輩と付き合ってることは言えない、だもん。
沙羅だけじゃない、誰にも言えない――。
そう思うのは、きっと。
私と先輩が両想いで付き合っているわけでは、ないから。
「そう、かもね...」
自然と小さい声になってしまう。
そもそも先輩は、私のことなんて好きじゃない。
だって―――。
昴先輩の、本当に好きな人は。
「あっ、あのね!
さっき入部してくれたんだよ!」
私たちの方をグルリと向きながら紹介してくれた黒田先輩。
その瞬間、私と昴先輩の視線が交わる。
「み、く?」
驚いたような表情で、少し気まずそうに私の名前を呼んだ。

