「ねえ、未来」
「ん?」
誰にも聞こえない声で私の名前を呼んだ沙羅。
「あの先輩めっちゃ可愛くない?」
私たちを待っている女の子を見ながら言った。
「............だね、」
.......知ってるよ。
沙羅よりも、前から―。
先輩が可愛いことなんて。
「みんなが見てる中、来てくれてありがとうね!」
先輩の前まで行くと、ベンチの上に置いてある荷物を退かせて、ここに座って、と嬉しそうな声色で言った。
「二人とも入部でいいのかな?」
長く綺麗なストレートの髪を耳に掛けながら聞いてきた。
「私は入部なんですけど、こっちの子は付き添いです。」
「あら、そうなの?」
目尻を下げて、残念そうな表情をした。
「私は、藤戸沙羅です。」
「沙羅ちゃんね!私は、黒田奈緒です。
一応2年生です!」
私が何も言わないでいると、二人とも私の方を見た。

