「なんとなく、かな」


ここでは、言えない。
もしここで昴先輩の彼女は私ですと言ったら、どうなるか目に見えているから。


それに、今はまだ言わなくてもいいかな。
でも、いつか沙羅に言えたらいいな。


私、あの昴先輩と付き合ってるんだよって。
私が彼女なんだよって。

そう自分から言えたらいいな。


「変なの~」


ふふっと可笑しそうに、でも可愛く笑った。


「入部届け出したいし、ついてきて!」


私の手首を掴み、サッカーコートの中にズカズカと歩いていく。


「ちょ、沙羅っ」


引っ張られる沙羅の力に抵抗して、歩くのを辞めたりしてみるけど、なかなか止められない。


サッカーコートの周りからたくさんの視線を感じる。
それは、きっと昴先輩のファンたちの視線だろう。


行きたくない...。
私は、関係ない。

そう自分で自分に言いかける。


段々と私たちが近づいているのが見えてきたのか、丁度、ドリンクを飲んで休憩しているであろう1人の先輩が


「奈緒ちゃーん、女の子だよ~」


ドリンクの補充をしている女の子を呼んだ。


「本当!?」


クルリとこちらに向き、私たちに向かって笑顔で手を振っている。