青空、ソーダ、制汗剤、スイカ。

夏はどこまでも爽やかで、それでいて救いがない。

一度外へ出ればどこに行っても暑さからは逃げられないし、セミの大合唱に大好きな人の声をかき消される。

山が近い田舎、縁側で私は一人思う。


(ほんと、ままならない)


私の後ろで、すすり泣く声が聞こえる。

セミの声に負けてしまうくらい、力のない弱い声。


「幸汰ぁ、水分なくなっちゃうよ」


今の幸汰には何を言っても無駄だってわかっている。

分かっているけれど、今ここで声をかけなかったら、幸汰はきっと殻にこもってしまうに違いない。

広い、男の子の背中が、小刻みに震えている。

ほんと、夏は残酷だ。