「あ。電話だ」 そう言って、 爽斗くんはのんびりとあたしを見上げて わずかに口角をあげる。 「蘭子ちゃんから」 って聞いてもないのに ”岸田蘭子”と書かれた スマホの画面を向けられてしまった。 ドクン、といやなふうに心臓が跳ねる。 「そっ、か。出ないの?」 急かすように着信音は鳴ったまま。 「電話するから、莉愛は声出すなよ」 命令口調は鋭く、 なのに愉しそうな視線があたしを貫いて。 「はい」と頷く前に、爽斗くんはスマホの向こうと喋り始めた。