だけど、爽斗くんの下駄箱があるのはあたしの背中側だし、


すたすたと迷いなく歩みよる音が
どんどん近づいてくる。



あ、でもよかった。
気づいてないみたい。


あたしの後ろを通り過ぎていく爽斗くんを横目に確認して
ホッとため息をつこうとしたとき。



——コツン、と
頭を叩かれてしまった。



「……莉愛のくせに避けんな」



そのまま、去っていく爽斗くん。



優しくもなければ、痛くもない絶妙の感覚が、頭のてっぺんに残ってる。


……爽斗くんだって、一瞬でわかる叩き方、声。



顔を上げられずにいるのはね、ほっぺが熱くなっていくから……。



「……ごめ……ん」


「毎日ごめんごめん、うざいんだけど」



さっさと先に行ってしまう足元が
視界から外れた。


それでもあたしはまだ地面しか見れない。