「……っ、」


爽斗(さやと)くんにいちばん、「似合ってる」って
言われたかったのに……。



やっぱり心もからだも地味なあたしには
こういうの、似合うわけないよね。


人気の美容院でね、

『すっごくかわいいよ!』って褒めてもらって、
『好きな人もドキドキしちゃうかもね!』って。


いっぱい褒めてもらったから
爽斗くんに見せたくなったの。


よく考えたら、
褒めるのも美容師さんのお仕事だよね……。


あ、ちゃんと女の美容師さんだよ。


爽斗(さやと)くんがそうしろって言ったから。



「こんな髪して、だれに見せたいの?」



——サラ、っと頬に髪が落ちてくる。


「……っ」


早起きして頑張って結んだ髪を
爽斗(さやと)くんが解いたから。



髪をすくって、あたしを見下ろす爽斗(さやと)くんは


綺麗な二重の幅を広げて、


圧倒的上から目線で笑うんだ。



「莉愛の目、震えてる。どーかした?」