それに、サヤが置かれている環境にむかついた。


サヤがたとえば暴力沙汰の喧嘩したって、親にちょっと怒られるだけで済む。



これ、本当に全然納得いかない。



俺は、挨拶の声が小さかった、とかそんなレベルで親に怒鳴られて、門限を破りなんかすれば、思いっきり殴られるのに。



なんでもっとひどいことしたサヤは、裁かれずに許されんの?



なんで、平等じゃないの?


いつのまにか燻っている違和感は妬ましさに変わっていた。



クラスの友達と遊んだ時だって、あいつはいつも俺の神経を逆撫でする。



『優心もう帰っちゃうの!?』


門限で一抜けするたびに、そういう友達のブーイングはよく沸いて、


そう言われると、求められているみたいで、少しくらい嬉しかったのに。


サヤはいつも言ったよな。


『早く帰んなよ』


俺を追い出すときのあいつの目が、癇に障った。



でも俺は空気を読んで、みんなに笑顔で返す。



『じゃーまた明日!!』



……むかつく。歯を食いしばって帰り道を走る。


帰りたくもない家に5時数分前に入って、宿題をこなす。


親の機嫌を損ねないように、周りの空気を壊さないように、こんなに自分を抑えてるのに。


『……おい、根暗。邪魔なんだけど』



自由気ままに、莉愛ちゃんをいじめても咎められもしない、お前なんか。


……死ねよ。