――目の前の人に誠実でありなさい。



お父さんの言葉は、きっと爽斗くんではなく、あたしに向けられたものだった。


伝えたあとの怖さから逃げて、自分の気持ちを言えない、あたしに対しての言葉……。



「仁胡ちゃん……あたしね。爽斗くんと良くないことがあって、今はつらくて言えそうにないから、落ち着いたら聞いてもらえる?」


いつだってあいまいに言葉を濁してきたあたしらしくないはっきりとした言葉を、ドキドキしながら言った。


すると仁胡ちゃんは、ぽかんとしてから、ぷっと噴き出した。



「うん! まかせろ!」


明るい笑顔があたしの心を軽くしてくれる。


「……仁胡ちゃん、だいすき」


「わたしもー!」