”要るものと要らないものを整理していると、自ずと大事なものが見えてくるものです”


お父さんにそう言われた時、入学する前のことを思い出した。


友達みんなと離れてしまった高校を見上げたとき、大丈夫っておもえたのは……たったひとり、あたしの隣には、爽斗くんがいたからだ。



あたしの場合は、持っているものが少なくて、整理しようがない。



……爽斗くんと、離れたくなんか……なかった……。




「おーい、莉愛ちん? どしたの」


「あ……。な、なんでもない」


仁胡ちゃんに慌ててそう返すと、


「なんでもなくないのはわかってる。でも、言いたくない気持ちもわかる。だから、言いたくなったら、ちゃーんと頼ってよ?」


仁胡ちゃんは、優しく笑みを浮かべた。


その笑顔を見て、ずきりと胸の奥が痛む。


「……ありがとう」



仁胡ちゃんは、人の傷みを察して、想像して、無理に触れようとしない。



爽斗くんにすがりついたあたしとは、真逆だ。