「それだけは嫌だ」って取り乱す莉愛は、子供みたいに泣いてしまった。



「おじさん……俺、ごめん。無理そう。莉愛と……仲良くすんの」



おじさんは、全然状況が掴めてないようで、俺と莉愛に順番に目を向けて、往復していたけど。



……その目に、俺の気持ちはきっと見抜かれた。



泣きたくなって、唇をぎゅっと噛みしめる。



沈んでいく俺の頭を、かたい手のひらがポンと撫でた。



「……そうか」


泣きじゃくる莉愛と、俯く俺の間で、


おじさんはぽつりとつぶやいた。


「会わない時間も、2人には必要かもしれませんね」


「どうして……?」


莉愛が嗚咽交じりに問う。


「要るものと要らないものを整理していると、自ずと大事なものが見えてくるはずです。考える時間をつくってみてもいいんじゃないですか?」



要るものと、要らないもの……。



「会わない時間を作って、ゆっくりと考えたらいいですよ」


いつの間にか、莉愛の涙は止まって。


俺を静かに見上げた。



「……わかった。抜け穴は、塞いでいいよ……」



その絞り出すような声は、今も耳に残っている。