「お前って、ほんとビビりだよね。ふつー倒れる?」


しれっとそう言った彼は、今あたしの部屋にいる。


話によると、倒れたあたしは、長い髪の女役の男子生徒に引き起こされてもぐったりと意識を失っていて、


『オレやっちゃった!? 保健室つれていったらいいのこれ!? 大丈夫!?』と慌てふためく男子を止めたのは爽斗くんだったらしい。


『その恰好で行ったら被害者増えるでしょ。外には小さい子もいるんだから。俺が行く』


と、いうことで……。


あたしは、爽斗くんにお姫様抱っこをされたらしい。



「あたし……重かったでしょ」


思わず両手で顔を隠した。


「腕ちぎれるかと思った」


「ごめんね……」


「いいけどさ」


すとんと、あたしが横になっているベッドのそばに座る爽斗くん。


「まー……なんか、やりすぎたっていうか。ね」


ごめん、と小さく続けた彼に、きょとんとしてしまう。


ちょっと、可愛い。



だとしても「いいよ」なんていいたくはないけど……。



「……」


「はー。お詫びに、そっちもなんか嫌がらせしていいよ」


「嫌がらせ?」


「罰って言うか。宿題でもいいし、なんかお詫びしますよって。要らないならいいけど」


またカウントダウンが始まる気がして、即答した。


「いる!」


「あ……そう。なにすればい?」


そう聞かれてあたしはベッドの上に起き上がった。


爽斗くんがこっちを向く。


あの綺麗な瞳と視線が重なる。


爽斗くんの方へ身を乗り出して、彼の胸に手をついて。



……そっと。


――チュ、とくちびるを合わせた。


かぁーーーっと熱くなっていく。



「……い、いやがらせ。です……」