こんなに要らないなんて言っていたのに、爽斗くんは……。


「ちゃんと全部うけとってくれるんだ……」


「そっちが押し付けるからでしょ」


「……ありがとう」



つい零れてしまう声に、爽斗くんは「はー?」と首をかしげて、それからあたしの頭にカサリとなにかをのせた。


手を伸ばし、受け取ったそれは、爽斗くんのクラスのチケット。二枚分だ。



「ありがとう……!」


嬉しくて目を輝かせるあたしを、爽斗くんは片頬で笑う。



「受け取ったな?」


「え?」


「渡したい友達いっぱいいるのに莉愛がほしそうにするから、しゃーなしあげる。だし、ぜったいに来なよ?」


――がし、と頭がつかまれて、
にやりとはるか上から笑う彼は、あたしと向き合う。



「俺が、莉愛だけは”特別に”もてなしてあげるから」



ドックン、と心臓が鳴ったと同時に、冴えたあたしはチケットを確認した。


――お化け屋敷。



「……えっ!! 爽斗くんのクラスお化け屋敷をやるの……!?」


「うん。莉愛が来るの、楽しみにしてるね」



満足そうに目を細める彼。


……意地悪な笑みだ。



あたしは、行きたくないと言えるわけもなく。



「た……たの、しみ……」


と笑うのでした。