「……何したら風邪なんか移るわけ?」



イライラしながら、グラスに水を注ぎ、莉愛に突き出す。



「別に、何もしてないよ……」


「家に送ったって、あいつの部屋にまであがったとか?」


「……」


答えない。つまりYES。
ひくっと頬がひくつく。


そこでなにがあったとか、聞きたくもないけど。




「まさかキスとかしてないよね?」


「してない……!」


……よかった。


いや、よくないけど。
すげームカつくけど。



「つーか、あんなに忠告したのに、莉愛は俺の縄張り荒らしたりすんだね」


「……ごめん」


「しかも莉愛に風邪移した本人は昨日けろっと学校来てたよな」


「うん。やっぱり誰かに移すと早く治るのかなぁ」


「なわけねーだろ」


バリっと、薬の箱の包装を破った。


「ひっ」


「これ一回二錠」


どす黒いオーラでも出てるのかもしんない。


ものすごい不機嫌な俺の手から薬をうけとる莉愛の指が震えている。


「……あ、ありがとう」


揺れる上目。怯えすぎ。


その顔、嫌いじゃないけどね。