部屋着になって、自宅のベッドに横になると、莉愛ちゃんは布団をかけてくれた。



「ありがと……莉愛ちゃん」


頭がガンガンするけど、莉愛ちゃんがくれた薬が効いてきたらきっと治る。


でも、少しだけ。


「莉愛ちゃん、片手貸して」


「うん?」


ベッドのそばに膝をついた莉愛ちゃん。


ひんやりとした彼女の手を額においた。


「気持ちいい」



「冷却シート買って来ればよかったね……。解熱には効果ないって聞いたことあったからやめたんだけど……」


「ううん、この手がいい」



困らせてるよね。


だから、真っ赤なんだよね。


「ねぇ、こうしてること、サヤ怒るんじゃない?」


「……あ。うん……。でも優心くん、風邪だからほっとけない」



だったら今だけ。少しだけ。


莉愛ちゃんのこと独占させて。



「……だったら風邪ひいてよかった」


そっと腕を引くと、油断していた莉愛ちゃんはぽふっと布団の上に倒れ込んだ。


「ちょ……と、優心くん……!」


「なーに?」


「何、じゃないよ……! 上に倒れちゃってごめんね、痛くなかった……!?」


焦って跳ね起きる莉愛ちゃんを、そっと抱きすくめれば。


眉尻を下げた火照り顔の彼女は、離れようと身をよじる。



「……っ」


でもごめん。全然離したくない。


「寂しいからちょっとだけ、こうしてていい?」


「え……。う……うん、」


「……ありがと」


ぜんぜんちょっとじゃなかったかも。



気が付くと眠っていて、テーブルの上には莉愛ちゃんからの置手紙が残されていた。


空っぽの家に空咳が響く。


「……いいなぁ、サヤは」