「1分だけ、ここで待てる?そこのベンチで座ってて」


帰宅途中、バス停のベンチに座るように言われるがまま、待つこと1分弱。


「……っ、か、買ってきたよ!」


ぜーはーと息を切って走ってきた莉愛ちゃんを見つけてぎょっとした。


「え……もしかしてあの薬局に行って来たの?」


「うん。必要なもの買っておいた方がいいかなって……、ごめん、待たせちゃって……」


「だったら俺も行ったのに」


「薬局、寒いでしょ……?」


にこ、と小さな笑みを控えめに向ける莉愛ちゃん。


優しいし、嬉しいし、いい子だなってすごく思う。


反面、全速力ダッシュで薬局に寄って、1分で買い物をすませてくる姿も。


……サヤのせいだなって、俺は思ってしまう。


しょっちゅうパシリにされてたのに、なんで好きになんの?


あんな奴のどこがいいの?




『”北風と太陽”の太陽って優しいから好き』



そう呟いたあと、『太陽って優心くんみたい』



小学生のころの莉愛ちゃんの言葉、俺は忘れられないのに。


きっと莉愛ちゃんは覚えてもいないんだろうな。