冷ややかな視線と、絡まる。
怒らせてしまったかもしれないって、ひやりとしたその時、
ふいに距離を縮めた彼は、無機質な目をあたしに向ける。
「莉愛は、俺にどーも思われたくないんだ?」
至近距離で呟かれて、
緊張に侵されたあたしは
吸い寄せられるように彼を見つめたまま。
閉じていく長い睫毛や、不機嫌に閉じられた唇に目を奪われて、
あまりに自然と、くちびるを奪われていた。
「……ん、」
唇が離れて、見上げた先には、
「お前、わけわかんねー……」と綺麗な顔を険しくゆがめる。
「……じゃあ、なんで避けないの?」
「え……」
そう言われると、返事に窮してしまう。
だって今回のキスは、明らかに避けられたんだから。
あたしは、彼にキスされるのがわかって、キスを待っていたんだ。
それを見透かされた気がして、頬がカッと熱くなる。
「なんでそんな赤くなんの。意味わかんない、お前」
眉根を寄せる彼の頬が、気のせいか赤らんで見える。
爽斗くんは、唇を噛んで「むかつく」と声を漏らした。
「勘違いとか、ダセーことしたくないの、俺は。この馬鹿女」
ば……ばかおんな。
苛立った声に、ひやりとする。



