「そこ! 誰かいるのか!?」
遠くから聞こえた男の人の声に、ビクッと肩が跳ねあがる。
そちらを見れば、
小さくともる懐中電灯がこちらに向けられている。
「やば……!」
「どうしよう、怒られるよね!?」
「逃げよ!」
荷物をかき集めて、裏庭を走る。
後ろのだいぶ先から、ザクザクと草を踏む足音が聞こえてくる。
「こら! そこの生徒! 待ちなさい!!」
その声に振り向いて、絶望した。
懐中電灯を左右に揺らしながら、全速力で走ってくるのは、アメフト部顧問の鬼教師として有名な先生だ。
遠いから顔は見えないものの、あんなにガタイのいい先生は彼しかいない。
「ぜったい追いつかれちゃうよ……!」
「とにかく走れ!莉愛ちゃん!」
手を引かれて、全速力の優心くんについていく。
「はぁっ、はぁ、も、脇腹が痛……い」
「頑張れ莉愛ちゃん!」
って言われても、もうダメそう……!
「優心くん先に逃げて……!」
あたしは足を止めて、
痛みに顔をゆがめながら、自分の脇腹に手を押し当てる。
……痛い。
「優心くん、先生にばれたらご両親に怒られちゃうから……! 逃げて」
そう言うと優心くんは一度たじろいで、
「いや。おんぶするから、一緒に逃げよ」
息を切りながら、優心くんはあたしに背を向けてかがむ。
「……それじゃ、きっと追いつかれちゃう。あたし隠れてるから、とにかく逃げて、お願い」
トンと背中を押して、優心くんに頭を下げた。
「わかった。俺が先生を誘導するから、その間に莉愛ちゃんは帰ってね」



