莉愛の柔らかな猫毛の黒髪が
ふわりと揺れている。



受験生の間、莉愛は美容院に行かなくて、
背中までのびちゃったウェーブの髪、



男子からの評判がめちゃくちゃよくてね。


そういうのって、やっぱすげームカつくじゃん。



だから「髪長すぎて似合わない」って莉愛に言ったら
翌日には切ってきて、今はセミロング。




莉愛は刷り込みのように俺のいうことをよく聞く。これ長所ね。




……てか、なんか駐輪所にも人が増えて来たな。


莉愛の泣き顔は見せもんじゃないから。


俺はうんざりとため息をつく。



「莉愛いつまで泣いてんの」


「……、ごめん」


「今すぐ泣き止んで。視界に入るだけでほんとうざい」



莉愛をみる男子の視線がほんとうざい。



ごしごしと慌てて涙を拭く莉愛の小動物みたいな動き。


”涙止まったよ、怒らないで”って言いたそうな
俺を見上げる不安そうな目。



ーーズキュン、と重たいものが、
心臓に突き刺さる。



「……こっち見るな」



……可愛くて死ぬ。