“藤妻 桜来”
という名前を知ったのは中学3年の春だった。

俺は父親の影響を受けて小学5年生からカメラを始めた。
カメラを触り始めた頃はただの趣味の延長線で、気分が乗れば撮った写真をコンテストに出す。
写真とはそれだけの関係だった。

中学では写真部があり少しは期待していたけれど、部員達に写真を撮るセンスなんて無かった。
焦点が合ってない写真。
誰をモデルにしているのか分からない写真。
何を伝えたいのか、何を撮りたかったのかいくら考えても分からない写真。
正直、ガッカリした。
もっとレベルが高いものだと思っていたが、ここまで低レベルとは思ってもなく、俺は入部を取りやめた。
それでも全生徒は何かしら部活に所属してないといけない校則があり、俺は幽霊部員という形で写真部に入った。